AWS re:Invent 2024 へ行って来ました

Kohei Yamada

2024.12.24

スリーシェイクの山田です。

今回、Amazon Web Services (以下 AWS) が 12月 にラスベガスで開催した世界規模のカンファレンスである AWS re:Invent 2024 に現地参加してきたので、そこでの様子や感じたことをここに残したいと思います。

AWS re:Invent とは?

もしかしたら、初めて聞いたという方もいるかもしれないので説明しておきます。

AWS re:Invent は、AWS が主催する世界最大級のクラウドコンピューティングカンファレンスです。

2012年から始まったこのイベントは、ラスベガスで開催されます。最新のAWSサービスや製品の発表、技術セッションだけでなく、ハンズオンラボというセルフ学習スペースや参加者同士が交流するネットワーキングといった様々なプログラムも用意されています。

イベントの規模感は?

今回の開催は 12月2日 ~ 12月6日 の 5日間でした。

会場はラスベガスのメインストリートであるストリップ通りに沿ったホテルが会場で、今回は通りにある Encore, Wynn, The Venetian, Caesars Forum, MGM Grand, Mandalay Bay の 6 つのホテルがセッション会場として利用されました。

とはいえ、 6 つのホテルが並んでるわけではなく、離れている会場間になると 5 km 以上になります。そのため徒歩だと時間がかかってしまうため、移動手段としてシャトルバスが用意されていました。バスは各ホテル間を往復するための専用シャトルバスで、本数も多く、スムーズに移動することができました。

引用:https://reinvent.awsevents.com/

画像の緑色の部分がセッション会場で、青色はイベントが提携している宿泊ホテルになります。

自分はここに掲載されていない、Horseshoe という Flamingo と Paris のちょうど間にあるホテルに宿泊しました。その方が比較的安いホテルが多いため、同じようにしている参加者も多く見かけました。

ちなみに今年のイベント参加者は全体で 約 60,000 名、そのうち日本は 約 2,000 名だったそうです。

現地の様子

セッション

だいたい朝の 8 時 30 分 くらいからセッションが始まります。

セッションのタイプはよくある講義形式だけではなく、実際に手を動かして学ぶワークショップ、複数人がチームになって他のチームと競い合うゲームデイといったハンズオン形式のセッションも用意されていました。

セッションの時間は内容により異なりますがだいたい 1 時間から 2 時間くらいだったかなと思います。それが 18 時くらいまで各会場で実施されているため、それぞれが興味のあるセッションを事前に予約するか、それが難しかった場合はキャンセル待ちで並んでセッションを受講します。

食事

食事に関してはイベントで用意されていました。朝食は朝 7 時から 9 時 30 分、昼食は 11 時から 13 時の間で食べることができたため、受講セッションの状況に応じて各会場で取りました。

セッションが終わると夕食になりますが、イベントに参加している各スポンサー企業が The Venetian にあるレストランやバーをイベント参加者向けに貸し切りにしてくれているため、好きな場所で食事をすることができました。

ちなみに自分は トレンドマイクロ さんと NetApp さんのところにお邪魔させていただきました。とても楽しく美味しいご飯をいただけて本当にご馳走様でした。

他にも AWS が企画する交流会もあり、自分は APJ(Asia Pacific and Japan) on Tour という、アジア太平洋と日本人たち向けのイベントにも参加させていただきました。

引用:https://pages.awscloud.com/apj-on-tour-aws-reinvent-2024.html

アジア太平洋の一つにも関わらず、あえて名前が出ているあたりは日本がそれだけ注目されていることなんだと思います。

その他

その他にもアクティビティで Morning yoga と 5k Race という、少し変わったイベントもありました。

自分は今回、 5k Race というマラソンイベントに参加しました。

朝 6時 30 分スタートだったため起きるのが辛かったですが、朝のランニングはとても清々しく運動不足解消にもなってとても楽しかったです。

そんな感じで毎日何かしらあるので、慌ただしかったですが、とても楽しく過ごせました。

Keynote 振り返り

ここまでは re:Invent の雰囲気について触れさせていただきましたが、ここらから多くの発表があった Keynote について振り返りたいと思います。

Keynote: Matt Garman, AWS CEO

まずは二日目に行われた CEO Matt Garman が登壇した Keynote です。

ここでは、これからの AI トレーニングに向けた Trainium チップを搭載したインスタンスから始まり、生成 AI の Amazon オリジナル基盤モデル Amazon Nova 、Amazon Q による .Net や VMware などなかなか移行が難しかったクラウド変換サポート、次世代 SageMaker の発表という AI / ML を中心とした発表でした。

ここで驚いたのが、AI 向けのチップを 学習用(Trainium) と 推論用(Inferentia) に分けるということです。 AWSの公式ページを見ると、もともと Inferentia は学習と推論の両方を対象にしたチップだったのかなと思います。

引用:https://aws.amazon.com/jp/ai/machine-learning/inferentia/

ですが、学習と推論では役割が違うため、近年の AI の発展により 1 つのチップで両方をカバーするのが難しくなってきた、というより適切ではないというようなことを述べていました。

そこで今回、学習に特化した Trainium2 を搭載した Trn2 インスタンス を General Available (以下GA) し、これからの進化にも対応するために Trainium3 をリリースするという発表を行ったようです。

同じ基盤モデルを扱う上で、チップを分ける必要があるということは、まだ生成 AI を便利ツールレベルでしか利用していない自分にとって焦りを感じさせる話でした。

また、この日で他に気になった内容といえばやはり Amazon Nova です。

Amazon は 2023 年 9 月にアンソロピック社へ 約 40 億ドルの投資を行い、さらに先月の2024年11月にも 約 40 億ドルの追加投資を発表したばかりです。 AWS ならオリジナルモデルを出すことは予想できますが、このタイミングでの発表には正直驚きました。この発表からも AI への力の入れようが伺えます。

Keynote: Swami Sivasubramanian, AWS VP of Data and AI

三日目は AWS VP の Swami Sivasubramanian の Keynote でした。

ここでも昨日の Matt Garman の話に続いて生成 AI 関連の話が中心でした。

新サービスに関しては Sagemaker と Bedrock の発表が多かった印象を受けました。

その中でも Amazon Bedrock Marketplace の発表には、なるほどなという感じです。

基盤モデルの開発が、これからもっと盛んになっていく中、「特定の分野に特化した基盤モデル」が次々と現れるはずです。そういった基盤モデルを Marketplace で扱うことで、利用する側がそれぞれの目的に合った基盤モデルを見つけ、自由に利用することができます。また、複数の基盤モデルを組み合わせることができれば、新たなサービス開発などの可能性が広がるなと感じました。

そして基盤モデルを提供する側としては、活用してもらうチャンスが確実に広がります。とはいえ、同時に他社との競争も激化しそうです。

それと、ここでは GA の発表が少なかったです。発表されたほとんどが Preview または Comming Soon が表示されていました。

そういう意味では、現在 AWS が取り組んでいることを発表し、これから目指す方向性を示すための Keynote だったのかもしれません。

Keynote: Dr. Warner Vogels, VP and CTO

四日目の Keynote はお馴染みの Dr. Warner Vogels です。

彼は Amazon CTO で AWS 設計者の一人です。 毎年、最後の Keynote を担当しているのですが、新サービスについて発表は他と比べて少なく、どちらかというとエンジニア向けに話をすることが多いです。とはいえ今回は新サービス発表が全くなかったので、そこはちょっと驚きでした。

ただ、とても興味深い話をしてくれました。それは simplexity というワードの話です。 simplexity とは、simple と complex が合わさった造語とのことです。 このワードの示す意図は「物事をシンプルにすることで複雑になる可能性がある」だそうです。むしろ「複雑化は避けられない」とも述べていました。

例えば、 S3 のように自分たちが simple に使っているシステムでも、裏ではとても complex (複雑)な処理が行われているということです。

普段当たり前に利用している S3 ですが、普通にデータをバケットに保存しているだけでも、その裏では 3つの アベイラビリティゾーン(AZ) に冗長保存されるように設計されています。また、ライフサイクルを設定することで一定期間経過したデータのストレージクラスを変更または削除することができます。他にもバージョニング機能を有効することでバックアップを複数世代保存することもできます。

さらに、彼は「複雑化することは決して悪いことではない」とも述べています。

複雑化には Intended Complexity (意図した複雑化)と Unintended Complexity (意図しない複雑化)があり、それを「見極めて把握する」ことが大切なのだそうです。

本当にその通りだなと、すごく納得する良い話を聞かせてもらいました。

他にも、Matt Garman の Keynote で発表があった Amazon DSQL についての仕組みの話もありましたが、その話は長くなるためここでは割愛させていただきます。

新サービス発表こそありませんでしたが、エンジニアだけでなく面白いと感じる話だと思いますのでぜひ時間ある際に試聴してみてください。

引用:https://youtu.be/aim5x73crbM?si=vcWHILY2Ssvi4Lwz

また、Keynote に登壇した3人ともが Security についても触れていたのも印象に残っています。

今までも重要な分野であったのはもちろんですが、生成 AI が中心となっていくこれからの時代は、より Security を維持するのが難しくなっていくため一層気をつけなくてはいけないのだと思います。

現地参加した感想

通常は日本で日本の方を相手にしているため、普段なかなか触れることのない文化に触れることができたのがとても刺激的でした。そして、日本からの参加者向けコミュニティもあるため、とても安心して参加することができました。

また、今年の re:Invent も昨年に続き生成 AI が中心のイベントだったなと思います。

それだけでなく、学習向けインスタンスやオリジナル基盤モデル、生成 AI マーケットの提供といったことから、AWS としても生成 AI をきっかけに re:Start をした感じも伺えました。

ということで、今回の re:Invent 2024 ではとても有意義な時間を過ごさせてもらいました。それには、自分が参加するにあたって色々と業務フォローをしてくださった方々がいたからです。本当にありがとうございます。

また、来年も参加したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

そして、この記事を最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

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