FinOpsとは 〜クラウドネイティブ・SRE・CCoEの導入によるFinOpsの実践〜

2024.11.1

目次

  1. はじめに
  2. FinOpsとは
  3. クラウド利用コストに関する課題
  4. Finopsの実現に必要なこと、導入方法
  5. FinOpsの取り組み例
  6. 結論

1. はじめに

現在、さまざまな業界の多種多様なシステムにおいて、クラウドサービス­­が広く活用されています。

クラウドネイティブなシステムは、状況に応じて迅速に構築できること、柔軟にスケールできること等の利点がある一方で、

利用方法やデータ量によってはコストが増大するという面もあります。

そこで近年、FinOps(ファイナンシャル・オペレーションズ)という言葉が登場しました。

FinOpsは、「Finance」と「DevOps」を組み合わせた造語で、ITと財務とビジネスのコラボレーションによって、クラウド利用価値を最大化しつつ、コストを最適化するための考えや手法のことです。

これは多くの業界や企業にとって非常に重要な考え方であり、クラウド利用のコストについて課題感を持っている経営者や財務担当者からも大きな注目を集めています。

本稿では、FinOpsとは何か、クラウド利用コストに関する課題、導入のポイント、

FinOpsの取り組みの具体例、について紹介します。

2. FinOpsとは

ビジネス環境変化が加速する昨今では、迅速なシステム構築のため、もしくは、システムの柔軟性や耐久性を高めてユーザ体験を向上させるためなど、クラウドサービスの重要性は日々高まっています。

しかし、クラウドは初期構築の手軽さや、スケーラビリティに大きなメリットがある反面、

アーキテクチャの特性や、扱うデータ量によってはコストが増大するというデメリットもあります。

そういったクラウドのコスト面に関して、悩みや不安を感じる経営者や財務担当者も増えています。

FinOpsは、クラウドの利用価値を最大化しつつ、コストの最適化を目指して生まれた考え方です。

クラウドの利用方法や支出に関する高度な知見を持ち、利用状況をコントロールすることで、企業がクラウドの利点を最大限活用しつつ、コスト管理ができることを目的としています。

この手法の他の名前には、「クラウド財務管理」、「クラウド財務エンジニアリング」、「クラウドコスト管理」、「クラウド最適化」、または「クラウド財務最適化」などがあります。

FinOpsには次のような原則があります。

  1. 可視性と責任:クラウドの利用方法やコストについて透明性を持ち、各チームが自身の利用に対する責任を持てるような仕組みを作る。
  2. 最適化と効率:リソースの使用を継続的に監視して不要な支出を削減し、高効率なクラウド利用によってビジネス価値を最適化する。
  3. 組織文化の変革:組織全体でクラウドコストに対する意識を高め、コストを考慮した意思決定を行う文化を育てる。

つまりFinOpsとは、クラウドコストに関する高度な知識や可視化の仕組みを取り入れ、

組織全体としてコストを意識したクラウド活用を進めていくための取り組みや、それを推進する先進的な組織や文化を醸成することです。

3. クラウド利用コストに関する課題

クラウドを利用したシステムの開発や運用において、企業が抱える大きな悩みの一つはやはりコスト面です。

クラウド利用コストに対して、以下のような課題を感じたことがある方は多いのではないでしょうか。

  1. 見積もりの難しさ:クラウドサービスの料金は、使用したリソースの種類や量、利用時間、データ転送量などに基づいて計算されるため、事前に正確なコストを見積もるのが困難である。
  2. コストの予想外の増加:データ転送量が予想以上に多くなった場合や、機能やサービスの利用の仕方によって、予期せぬコストの増加が起こる。
  3. リソースの無駄遣い:不必要なリソースが稼働している場合、それがコストの無駄遣いにつながる。リソースの使用状況を適切に管理し、必要なリソースだけを使用することが重要な一方、システムの可用性を担保する必要もあり、システム運用とコスト管理のバランス感覚が必要。
  4. コスト管理の複雑さ:マルチクラウドや多数のサービスを利用している場合、それぞれのコストを把握し、全体のコスト管理を行うのが複雑になる。

4. FinOpsの実現に必要なこと、導入方法

そういった課題の解決に対するアプローチがFinopsですが、具体的にどのようにFinopsを導入し、その手法を実践していくべきでしょうか。

Finopsの重要な概念である「データ可視化」「クラウド利用最適化」「組織文化の醸成」という観点を踏まえ、以下の取り組みが非常に有効となります。

  1. CCoE(クラウドセンターオブエクセレンス):組織内でクラウド専門知識を集約し、効率的なクラウド運用を推進する。クラウド戦略の策定、ガバナンスの確立、スキルの育成、セキュリティとコンプライアンスの管理など、企業のクラウド利用を全面的にサポートできる体制を作る。
  2. クラウドネイティブ:マイクロサービス、コンテナ、Kubernetes等を利用して、スケーラブルで柔軟なシステムを構築する。先進的なクラウド利用手法を取り入れることにより、システムの可用性を高めつつ、余剰リソースを抑えてコスト削減を目指すことができる。
  3. SRE(さイトリライアビリティエンジニアリング):運用自動化やデータ可視化など、システムの信頼性と効率を高めるための高度な技術知識を持つチームを組織する。運用にソフトウェアエンジニアリングの原則を適用し、さまざまな自動化や情報の可視化を通して、データドリブンな運用やコミュニケーションを促進する。

5. FinOpsの取り組み例

現在、CCoEやクラウドネイティブ、SREを実践する企業では、以下のようにFinOpsに関する取り組みを行っています。

  1. 予算管理と予測:クラウドの使用状況とコストに関するリアルタイムのデータを可視化し、予算超過を防ぐために予測分析を行う。予算に対する閾値のアラートを設定することも可能で、チーム内外でコストに関するコミュニケーションや意思決定をしやすくする。
  2. コスト割り当て:各部門やプロジェクトにクラウド予算を割り当てることで、責任を明確にし、コスト意識を高める。SREや各開発チームが予算を意識し、最適なクラウド利用計画を立てることも出来る。
  3. リソースの最適化:使用されていない、または過剰にプロビジョニングされたリソースを特定し、改善することでコスト効率を高める。SREチームによるシステム横断的なオートスケーリングやオートヒーリング機能の導入で、スタンバイによる余剰リソースを削減できた例も多くある。
  4. 価格モデルの最適化:リザーブドインスタンスやスポットインスタンスなど、コスト効率の良い価格モデルを活用する。高度なクラウド知識を集約したCCoEやSREチームによって、それぞれのシステム特性に応じた最適なクラウド利用計画を策定することができる。
  5. ガバナンスとポリシーの強化:CCoEによるクラウド利用に関するポリシーを設定し、ガバナンスの枠組みを通じて遵守を確保する。高度なクラウド知識を持った組織が横断的に機能することで、企業のシステムにおけるクラウド利用を横断的に統制し、コスト最適化を実施することができる。

具体的な国内外の事例もご紹介します。

メルカリ

日本国内では、メルカリがコストダッシュボードを作成し、クラウド利用料などの費用の動きを整理して、コスト増加に関する速やかな分析や検知を可能にしています。

ワンキャリア

ONE CAREERでもAWSのコストを可視化し、CCoEを組織してクラウド利用最適化に向けた取り組みを実施しています。

グローバルでは、アリババやNetflix、Atlassianなどの大企業が2020頃からFinOpsに取り組んでおり、アリババではFinOpsチームを設立して費用の可視化と分析を行う中で、FinOpsに関するソリューションも開発し、現在はサービス提供もしています。

これらの企業のFinOpsの実践には、CCoE、クラウドネイティブなシステム、SREなどの導入や活用が紐づいており、FinOpsの考えや手法を組織間や企業全体に浸透させる有効な手段であることがわかります。

6. 結論

多種多様なシステムへのクラウド利用が増え、利用コストに関する課題感も増大している中で、FinOpsの考え方は今後の企業経営に関して重要なポイントとなります。

CCoEやクラウドネイティブ、SREといったFinOps実践に向けた取り組みを導入することで、クラウドの利用価値を最大限に高めつつ、コスト効率化を目指すことができます。

Sreakeは、高度なクラウドネイティブスキルを持ったエンジニアやアーキテクトを擁し、クラウド利用価値の最適化に関する技術支援を行なっています。

また、CCoEやSREの組閣・コンサルティングから、 SRE運用内で使用するツールの導入など、 上記の取り組みに関して全般的にご支援しています。

FinOpsに関するお悩みやご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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