GTC2025 参加記録 ~Keynote~

Daisuke Akagawa

2025.3.31

3-shakeのsreake事業部でフルスタックエンジニアとして、主にML周りを担当している赤川です。今回は、サンフランシスコのサンノゼで3/17~3/21に開催されたGTC2025において、NVIDIA CEOのJensen Huang 氏(以下、Jensen氏)によって実施されたKeynoteについてレポーティングできればと思います。

GTC2025とは?

そもそもGTCというイベントは何かということですが、GPU Technology Conferenceの頭文字をとっており、文字通りGPUの技術に関するカンファレンスとなっております。本カンファレンスでは開催期間を通して様々なイベントやセッションが開かれており、その中でもKeynoteはCEOであるJensen氏による発表があるということで、毎年とても注目が集まります。昨年のGTC2024では最新のGPUアーキテクチャであるBlackwellが発表され大きく注目を浴びることとなりました。

3-shakeとしては今年が初めての現地参加であり、Keynoteにも直接参加してきました。それでは、どのような発表があったのか深ぼっていきましょう。

Keynoteの会場の雰囲気

具体的な発表内容に入る前に、Keynoteの会場の雰囲気について簡単に共有させていただければと思います。GTC2025はサンノゼにあるConvention Centerというところで基本的に行われているのですが、Keynoteについては参加人数がとても多いことからこのセンターでは開くことができず、少しな離れたSAP Centerというところで開催されました。SAP Centerはこんな感じの建物でして、かなり大きいです。

私がとれた席はちょうどステージの真反対の席でした。そこからとった写真が以下になります。パッとみてわかってもらえるとおり、会場は満員で一つ一つの発表があるたびに熱気がすごかったです。

今年の状況はわからなかったですが、昨年のイベントは生で見ることができずにライブビューイング会場でみた人もいたということで、GTCのメインイベントとして流石の参加人数であったと思います。

どんな発表があったか

それでは、具体的にどのような発表があったか深ぼっていきましょう。なお、Keynoteを見たい場合はこちらの公式YouTubeにて公開されていますので、ご確認ください。

GTC March 2025 Keynote with NVIDIA CEO Jensen Huang

AI業界の変遷について

まず初めに、AI業界がどのように移り変わってきたかについて言及がありました。2012年のAlexNetの出現に始まり、Perception AI、Generative AI、Agentic AIそして今後はPhysical AIへと移り変わっていくということです。ディープラーニングが出現し始めた当時はいわゆる画像認識や音声認識などといった認知するためのAI(これがPerception AIに該当)が主流でした。その後、みなさんご存知の通りChatGPTをはじめとする生成AIの技術の飛躍的進歩により、Generative AIの時代が到来し、さらには生成AIをアシスタントとしいわゆるエージェント的な活動をさせるAgentic AIの時代となりました。この次はいったいどのような時代が来るかということについて大きく言及されており、自動運転やロボティクスといった現実世界に対して物理的にアクションを取るようなPhysical AIの時代が来るという話でした。こちらについては今後到来するというよりも、現時点で自動運転などが一部実用化されていることを踏まえるとすでにPhysical AI時代には突入していると言えます。

AI開発における課題について

次に言及があったのは、AI開発をスケーリングするにあたり直面する課題についてです。

まず一つ目は「データの問題をどのように解決するか」です。ご存知の通り、AIの開発をするためには多くのデータを必要とします。AIを開発するためにはデータが不可欠であり、いかにして必要なデータを収集するかが大きな問題であると言えます。

二つ目は「AIの学習をいかに人手が介在しない形で実行できるか」です。これはなぜ課題かというと、我々人が介在することが可能な時間は限られており、かつ人手が介在してしまうとコンピューティングリソースが処理できる速さより確実に処理が遅くなるためです。

三つ目は「どのようにスケールしていくか」です。これはいわゆるスケーリング則に関する言及です。より高精度かつ大規模なモデルを開発しようとすると、それだけ複雑な構成になり、それに伴って必要な計算リソースも大規模になります。特に生成AIの分野について考えると、モデルはトークンと呼ばれる単位で情報を持ち、最終的にユーザに結果を返します。特に直近利用されている生成AIの使い方では段階的な思考をさせることにより、求めている回答を得られるような仕組みを導入することが多いですが、その中では多量のトークンがやりとりされています。トークンの使用量が増えれば増えるほど計算リソースが急激に求められるようになるため、どのようにスケーリングしていくかが大きな問題になるということです。

これらの課題を解決することでAI開発のスケーリングは進んでいくかと思いますが、ソフトウェア、ハードウェア両方の課題がたくさんあるため、今後の進展に期待したいところです。

ソフトウェア開発を大幅に加速させるライブラリ群の紹介

GPUを利用したことがあることなら一度はCUDAというものを聞いたことはあるのではないでしょうか?CUDAとはGPUで並行実行させるためのプラットフォームです。例えばディープラーニングモデルを学習する際に並行実行させたい時があるかと思います。そのような時に利用するものがCUDAのライブラリ群になります。しかし、おそらく大半の開発者はCUDAを直接利用したことはないのではないでしょうか?かという著者自身もCUDAを直接利用したことがありません。

今回のKeynoteでは、NVIDIAが提供している多数のCUDA関連のライブラリについて紹介がありました。CUDAのエコシステムが急激に整いつつあり、かつOSSとして提供されるものが多いため、歯痒いところにも手が届くようになると思います。一方、まだCUDAを利用したソフトウェア開発ができる人材はおそらくかなり少数なのではないかと思います。AI開発だけにとどまらず、CUDAを利用したソフトウェア開発によって生産性を大幅に改善できる可能性も十分ありますので、ぜひご興味ある方は調べてみてはいかがでしょうか。

AIを利用する業界について

次に言及があったのは、様々な業界にAIが利用されているという点です。こちら、改めて言及するまでもないかもしれませんが、従来の画像処理のためのAIモデルに収まらず、ここ数年の生成AIの台頭により、業界横断的にAIが利用されています。

その中で特に我々sreake事業部としては特にクラウドサービスプロバイダーでのAI活用に着目しています。Google CloudやAWSなどのクラウドサービスプロバイダーではAIを利用する基盤だけでなく、AI自体の提供も積極的にされています。そのような基盤を利用することにより、開発者は最小限の開発コストをかけるだけでAIシステムをデプロイできます。もちろん、どのようなAIを利用した以下によっては大規模データを収集して独自モデルの学習が必要になるケースはあるかと思いますが、学習済みモデルが簡単にデプロイできる基盤が整っているのはとても大きな進歩だと感じています。

個人的な興味で言うと、ロボットおよび自動運転分野にとても興味が惹かれました。こちらはPhysical AIに直結する話です。例えばロボットの例で言うと、従来はどのようにロボットが動くべきか、人間がティーチングしたり条件をひたすら列挙していく必要がありました。これをAIを利用することにより、どのような動作をさせる必要があるかをAI自身が学ぶことができ、かつその学んだ内容をもとに現実世界のロボットを制御することができるようになっていきます。このような技術を利用することで、人間の活動を大きくアシストしてくれるロボットや自動運転技術の研究・実装が飛躍的に進歩していくことが見込めます。

自動運転技術に関して

今回のKeynoteでは特にPhysical AIについて大きく取り上げられておりましたが、その一つとしてやはり自動運転について取り上げられておりました。自動運転のためのAI開発には画像認識モデルを開発・検証するための大規模データセットが必要ですが、そのデータ収集はとても大変です。例えばデータ収集期間が決まっていたとして、その期間内に四季折々のデータを撮ることは難しいですし、晴れ・雨・雪など様々な環境下でのデータを収集するのは現実的ではありません。このような課題に対応するため、Omniverseという3Dシミュレーションに特化したプラットフォームをNVIDIAは持っていますが、その中でも特にCosmosが大注目されています。Cosmosはとても多くの仮想シミュレーション環境を作り出すことができるため、収集が難しいデータを自動で作り出すことで開発スピードを飛躍的に向上させることができます。

また、自動運転に関してGM社との提携が発表されました。これにより、NVIDIAは仮想シミュレーション環境だけでなく現実世界の車と連携させることで自動運転技術のさらなる飛躍を目指すことでしょう。

Blackwellとデータセンターインフラ

昨年のGTC2024にて発表されたBlackwellですが、今年のKeynoteではBlackwellを用いたハードウェア構成に関するものと、今後数年を見通した次世代のGPUの発表がありました。

生成AIの成長、つまり大量のトークンが生成される現在において、生成されるトークン数は日々増えていきますがレスポンス速度がそれに応じて遅くなるとユーザが離れてしまうため、スループット・レイテンシーが大きな課題となります。そのようなニーズを満たすために、Blackwellが最適であるということです。

次に、推論を最適化するためのソフトウェアとしてNVIDIA Dynamoが発表されました。Dynamoは分散推論を最適化するためのライブラリであり、幾つものGPUが動く推論処理をオーケストレーションすることで、より短い時間で大量のトークンを処理できるようにすることが可能になります。

併せて、BlackwellとDynamoを組み合わせると従来の構成と比較してどれだけ高性能であるかが示されました。提示された数値を見ると、圧倒的なパフォーマンスを出していることがみて取れます。もちろんどのようなモデルを使うか、どのような設定で利用するかによっては値に変化はあるものの、Blackwell以前のモデルのHopperと比較すると圧倒的な性能を出すことが見て取れます。

また、Blackwell Ultraが2025年後半以降で利用できるようになることが発表されました。既存のBlackwellを用いたGV200 NVL72と比較して1.5倍の性能であることが示され、さらにBlackwellを利用したAI基盤の強化が来るということです。

そして、今回2026年以降のロードマップも示されました。具体的には、Blackwellの次世代となるVera RubinそしてRubin Ultraの情報も公開しました。これらは推論速度だけではなく搭載メモリやスループットなどが圧倒的なスコアとなっており、実際に使える日がとても待ち遠しいです。

併せて、NVIDIAの最新のEthernetプロダクトであるSpectrum-Xシリーズが発表されています。このプロダクトを用いることにより、通信速度が従来のものと比較して圧倒的にアップグレードされるほか、消費電力が低減されるため、よりエコに高性能モデルを動かすことができる未来が想像できます。

DGX SparkとDGX Station

今回の発表の目玉の一つとして、Blackwellが搭載された小さな筐体のマシンであるDGX Sparkが発表されました。従来のJetsonなどと比べると大きいですが、エッジコンピューティングとしても十分利用できるサイズです。小さな筐体ですが、NVIDIAが提供している各種推論サービスを問題なく実行できるマシンということで、エッジコンピューティングの世界も大きく変革を遂げるタイミングであると期待しています。

また、以前NVIDIAで提供されていた液冷高性能ワークステーションであるDGX Stationが復帰することが発表されました。Blackwellを搭載したAIとデータサイエンスに向けたワークステーションとして復活するということで、研究者の開発者体験を圧倒的に向上させるワークステーションの第一候補となると予想します。

ロボティクス

このほかにもいくつか発表はありましたが、何より注目を浴びたのはロボティクスについてではないでしょうか。大きなテーマとしてPhysical AIが取り上げられていたため、もちろんロボティクスについても言及がありました。特に一番会場が盛り上がったのは、実物のロボットが会場に現れた時だったと思います。今回ディズニーとの提携も発表されましたが、まさにディズニーの映画に出てくるような可愛らしい見た目のロボットが現れ、会場は大盛り上がりしていました(公式YouTubeから見るともっと鮮明にロボットの動きが見れるのでぜひご確認ください!)。

技術的なところで言うと、OmniverseやCosmosといったバーチャルと現実世界を繋いでくれるデジタルツイン技術について言及があり、今までは開発が難航していたようなロボット開発であったり自動運転などを何段階も引き上げてくれるような環境を提供してくれると言うことです。

最後に

今回は、GTC2025におけるKeynoteについて、まとめさせていただきました。今回が初めてのGTCの参加ということでとても期待して参加しましたが、その期待は個人的にいい意味で裏切られたと感じております。システム開発者にとってNVIDIAが提供しているソフトウェア群はとても魅力的かつ応用性が高いものとなっており、今後たくさん検証していきたいと考えております。またGPUについては今後数年にわたるロードマップが明確に発表され、より一層生成AIをはじめとするAIの開発が加速され、実用化されていくのではと期待しています。

機会があればぜひ来年のGTCも参加できればと思っております。なお、Keynote以外にも様々なセッションなどが開催されたのですが、そちらの情報についても随時共有していく予定ですのでお待ちいただければと思います。

おまけ

Keynoteに参加するために早めに会場に着いていたのですが、なんとKeynote前にJensen氏がDenny’sのフードトラックで配ってました。残念ながら並んだりはしなかったので直接もらえはしなかったですが、目の前にいらっしゃって写真撮れましたので共有します!

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