スリーシェイクインタビュー: 技術顧問 うたもくさん編

Daiki Hayakawa

2024.12.10

こんにちは。スリーシェイクのSreake事業部所属の早川(@bells17)です。

今回は7月からスリーシェイクの技術顧問に就任してもらったうたもくさん(@utam0k)に対談形式でインタビューをさせていただきましたので、その内容をお届けします。

  • 技術顧問になっていただいた背景
  • 技術顧問としてどのようなことに取り組んでいるのか?
  • うたもくさんとOSSの関わりについて
  • 技術顧問としての今後の展望

など、うたもくさんの中々聞くことができないお話や、スリーシェイクでの活動についてインタビューさせていただいています。

かなりのボリュームになってしまったのですがとても面白い内容となっていると思うのでぜひ最後までご覧ください。

それではインタビューの内容に入っていこうと思います。


はじめに

早川:

改めまして、スリーシェイクの早川です。

Sreake事業部に所属していて、普段は顧客の方のシステム環境へのKubernetesやコンテナの導入支援やシステム設計・構築を行っています。

その他にも社内における技術的なアウトプット活動を行う「技術検証」という活動の中のチームの1つのリーダーをさせていただいたり、Sreakeの技術的なプロモーション活動をどうやっていくのかを考えたりする活動をさせていただいています。

個人としてもKubernetesへのコントリビューションに取り組んだり、Kubernetesに関するミートアップのオーガナイザーをしていたり、YouTubeでクラウドネイティブ関連の情報発信してたりします。

本日はよろしくお願いします。

うたもく

7月から技術顧問をさせていただいてますうたもくです。

僕のほうでよく知られているのだとCNCF Sandbox Projectのyoukiというコンテナランタイムの作者であることだと思います。

他にもCloud Native Computing Foundation(CNCF)のAmbassadorsであるとか、Cloud Native Community Japan(CNCJ)で活動していたりしています。

OSSが結構好きで、普段からよくOSS活動とかやってたりするような人です。

Open Container Initiative(OCI)という低レベルコンテナランタイムの仕様のメンテナをやっていたりとか、最近だとWasmやKubernetes周りを実装したり、あとはKubernetesのOrgのメンバーとか、いろいろやらせてもらっています。

よろしくお願いします。

技術顧問にお誘いしたときのお話

早川:

まずはじめに技術顧問になっていただいた背景としてなんですけども、うたもくさんと比較的近い立ち位置なのがすでに既にスリーシェイクで技術顧問になっていただいている青山さんかなと思っています。

青山さんはKubernetesのスペシャリストで、所属企業で社内向けのマネージドKubernetesサービスの開発などを行われていたり、Kubernetes Meetup TokyoCloudNative Daysのオーガナイザーをされていたりします。

スリーシェイクの技術顧問として、青山さんには定期的にKubernetesやクラウドネイティブ関連の情報の共有をしていただいたり、技術系メディアで記事を執筆する機会を提供していただいたりしています。

それに対してうたもくさんはKubernetesのorganizationメンバーとしてコントリビューションもされていますが、何より低レベルコンテナランタイムであるyoukiの作者でもあり、OCI Runtime Specificationという低レベルコンテナランタイムの仕様策定にも関わっている。

加えてCNCF AmbassadorsやCNCJでの活動など、日本における技術コミュニティでの活動も広く行っているというイメージがありました。

スリーシェイクはSreakeという技術的にハイレベルなSREの支援業務が事業の中心となっていて、その中でもKubernetesやコンテナ領域を特に強みとしてる部分があります。

そのため、スリーシェイクの所属エンジニアがコンテナ領域に関する技術的なレベルをアップしたり、知見を深めたり、あるいはうたもくさんに技術顧問になっていただくことで、スリーシェイクという会社がコンテナ領域に高い知見がある会社であるということを社外の方にも知っていただくことは非常に価値のあることではないかと考えました。

今話したようなことをスリーシェイクの社内で話して「うたもくさんに技術顧問になってもらうのどうでしょう?」という打診をしてみたら割とすんなり「いいですね!」となり、社内調整についてはかなりトントン拍子に進んだのを記憶しています。

このような背景から僕からうたもくさんに「スリーシェイクの技術顧問になってもらえませんか?」というメッセージをさせていただいて実際にお話をさせていただきました。

うたもくさん技術顧問の話しをされた時はどんなことが記憶に残ってますか?

うたもく:

僕の中ではスリーシェイクは青山さんが技術顧問になっている会社というイメージが強かったです。

最近だとbellさん(早川のこと)さんが入社されたこともあって、bellさんのイメージもありました。

あとは技術的な検証をした記事とかを積極的に出してるイメージがあって、最近だとeBPFの記事を出してるのが記憶に残ってたりします。

一方で実際にビジネスとしてどういうことをやっているかについては、toC向けのビジネスではないのであまりイメージがなかったです。

それでメッセージをもらった際は「技術顧問とは何をやる役職なんだろう?」という疑問がはじめに浮かびました。

その後、実際にbellさんに話を聞いてみたら「スリーシェイクとしてOSSに力を入れていき、それをブランディング戦略としてやっていきたい」という話をされました。

これを聞いたときに「今までにないモデルだな」と思ったのを記憶しています。

だいたいは「自分たちが使っているOSSがあって、それにコントリビュートします、金銭的な支援をします」というのはよくある話しだと思うのですが、そうじゃない形のモデルがかなり面白そうなんじゃないかなと思ったので、(技術顧問になるということに対して)「ぜひ」ということで回答させてもらった記憶があります。

早川:

そうですね。前述したように、スリーシェイクはいろんなポイントで技術的な強みを色々ともっていることが重要な要素の会社だと個人的に考えています。

会社としても所属エンジニアの技術的なアウトプットを重視していて、例えば自身が知らない技術について調べてブログを書いたり登壇を行ったりといったことにもある程度リソースを割いてくれてます。

僕が関わっているところで言うと、例えば技術検証活動という「仕事に役立つかもしれない技術を調査をしてブログなどでアウトプットを出そう」という活動を業務の中で行っています。

僕の技術検証チームだと、最近ではブログや登壇などでアウトプットを出す方が半分くらいいらっしゃって、もう半分のメンバーはOSSへのコントリビュートをテーマに取り組んでいたりします。

(この取り組みについてはCloudNative Days Winter 2024 船上LT会で発表しています)

実際にコントリビュートしているOSSで言うとKubernetesやうたもくさんのyoukiなどが多いのではないかと思うので、自分たちとまったく関係の無いOSSかというとそうではないものが多くはなると思うのですが、「OSSへのコントリビュート」という活動は会社にとっても一定の価値がある行動なのではないかと考えています。

色んなアウトプットを出すことは採用にもつながりますし、僕らのような支援業務を主にやっている会社としてはスリーシェイクという会社を社外の方々に知ってもらうきっかけにもなると思っているからです。

認知度拡大を主に考えるのであればイベントで登壇したりする方が露出にも繋がりますし、わかりやすい取り組みかもとも思うのですが、それに加えて、OSSへのコントリビュートに取り組みそれぞれが強みとなる技術領域について深く理解することで、様々な技術領域のDeepな情報発信を行うというのも重要じゃないかと思い、OSS活動についても技術検証チームで取り組んでいます。

なにより色んな技術領域で深い知見があると他の業務で役立つことも多いですし。

そのため、うたもくさんには「スリーシェイクにとってOSSへの取り組みというのは結構重要なものだと思うので、OSSの取り組みについての支援を技術顧問の仕事の1つとしてできないか?」という要望をお伝えしたと思います。

この話を聞いた時、うたもくさんとしては実際どういうことをやっていくのが良いかなというイメージを持ちましたか?

うたもく:

それでいうともうすでにやってもらってるものもあるんですが、youkiの開発の一部だったり、僕がやりたいけど手が回らないところのissueを担当してもらったりを考えてます。

他にもKubernetesでもスケジューラ周りで明らかに人足りてないよねという部分があったりするのでそのあたりだったりとかをやってもらえたらなと思っています。

あとは技術顧問就任記事の方にも書かせてもらったのですが、CNCJの方で個人でのコントリビュートは一定あるが、日本企業のコントリビューターが足りてないとか、KubeCon Japanの開催をしていくにあたってもっと、日本企業が実際に手を動かすコントリビューション活動に関しては数が少ないという課題がよく話に出るので、このあたりでなにか良い形ってないのかな?というのはふんわり考えてました。

もちろん個人としてやっている人はそれなりにいて、僕は個人としてひたすら開発をしている勢だった。

それが今回の技術顧問就任にあたって、企業としてしっかりコミットしていけるよねというイメージが結構しっかり具体的に持てたので、コントリビュートの支援というのを技術顧問の活動の1つとしてやっていきたいと思いました。

また、CNCJとしての課題感の1つとして、日本の国内企業からのOSSへの貢献が少ないというものが挙げられます。

これに対してスリーシェイクで新しい形での企業からのOSS貢献のモデルができるかもしれないと感じています。

うたもくさんとOSS活動

早川:

話題はちょっと変わるのですが、技術顧問の話について深堀りする前にうたもくさんが元々取り組んでいるOSS活動について詳しく教えてもらっても良いでしょうか?

うたもく:

まず1つ目として、低レベルコンテナランタイムのRust実装である「youki」の開発を行っています。

僕がファウンダーというかファーストコミッターという言い方が適切かわからないんですが、youkiの作者です。

今も開発を続けていて、ちょうど最近CNCF Sandboxのプロジェクトとして認定されたところになります。

元々は僕のお勉強用のプロジェクトとして始めたものだったんだけど、ありがたいことに評価を一定いただいて実際に実運用で使われているところもあります。

2つ目はyoukiのつながりからで、Open Container Initiative(OCI)という低レベルコンテナランタイムの仕様を決めるところに関わっています。

例えば「これはyoukiなら実装できるものなのか?」みたいなコメントだったりをやっていたりしています。

3つ目はKubernetes関連です。

Kubernetesは最近結構色々やっているんですけど、Kubernetesは楽しいので自分が興味があるスケジューラ周りなどにコントリビュートしていたりします。

Kubernetesのorganizationメンバーに入れてもらうくらいには活動しています。

他にもrunwasiというのを使ってKubernetesの上でWasmで動かすというプロジェクトにも取り組んでいます。

runwasiには実はyoukiが使われていて、Azure Kubernetes Serviceで実際に使われています

これらは主に実際に手を動かす活動として取り組んでいます。

一方でコミュニティ活動としてはCNCF AmbassadosrとCloud Native Community Japan(CNCJ)の2つのメンバーとして活動しています。

CNCF Ambassadorsはグローバルな活動になっていて、CNCFのプロダクトの普及だったりとかOSSへの貢献などもCNCF Ambassadorsとして見てもらっているので、開発活動を通じてのCNCFへの貢献といったものが主な活動になっていたりします。

(取材時点では)まだCNCF Ambassadorsは5名しかいないというところもあって、日本のプレゼンス向上という意味でも日本におけるCNCF関連の活動の認知度向上にも取り組んでいます。

このCNCFのつながりでCNCJの活動も行っています。

CNCJはCNCFの日本支部になっていて、これのorganizorをやらせてもらっています。

CNCJでも色々活動テーマがあるのですが、それの1つで最近達成したものとしてKubeCon Japanというものがあります。

また、日本の特徴としてCNCFの活動があまり普及していないというのが挙げられます。

これは日本においてはCloudNative Daysのようなローカルのコミュニティがすごい成長していたからというのがあると思っています。これはこれでとても素晴らしい活動だと思います。。

一方で、CNCFというグローバルな場でのプレゼンスを日本全体として強化していくというのも大事だよねという課題感を持っていて、そのための手助けをしたりということもやっています。

早川:

そうなんですね。youkiとかはすごい有名なので、クラウドネイティブ関連の情報や勉強会をある程度見てる人はみんな知ってるくらいに知名度がありますよね。

前にうたもくさんとお話をしたときに「会社でコンテナを使うことになったから、じゃあ勉強のためにコンテナランタイムを自作しました」みたいな話を聞いて(技術的にすごいなという意味で)「何言ってんだろうこの人」って思った記憶がありますね。

OCIについて先程も少し話があったと思うのですが、こちらについては具体的にはどんな活動をされてるんですか?

うたもく:

例えば仕様の良し悪しの判断についてコメントをしたり、マネジメントというか、コンテナの仕様を考える人って全然足りて無くて、例えば最近のリリースについては僕がリードしてリリースを出しました。

あとはみんな仕様は出すんだけれども、「他のコンテナランタイムで実装できるのか?」という視点が必要で、リファレンス実装であるruncだけで実装できるとかだと微妙になってしまう。

なのでyoukiやcrunなど、「他のコンテナランタイムで実装できるのか?」といったことの検証だったり、判断だったりをやっていたりします。

最近だと面白そうだったプロセスのio priorityを実装して仕様に入れたりとかもやってました。

実際仕様を出すときはruncかyoukiかcrunで実際にPoC実装をしてくださいというコメントがわりかしつきます。

早川:

OCIの活動って何年くらいからやっているんですか?

うたもく:

だいたい2023年の3月くらいからなので、だいたい1年半くらい活動しています。

早川:

ありがとうございます。

この流れでコミュニティ活動についても質問させてください。

例えばCNCF Ambassadorsの活動はいつぐらいからやっているんですか?

うたもく:

2023年秋から活動していて、Ambassadors 2.0の2期生になります。

CNCF Ambassadorsは年2回募集していて、1年ごとの任期になります。

2024年のAmbassadorsも無事承認されたので、引き続きAmbassadorsとして活動していってます。

早川:

なるほど。活動期間としては1年ちょっとくらいなんですね。

ちなみにCNCF AmbassadorsとCNCJの活動内容というのは別のものなんでしたっけ?

うたもく:

全然別のものになります。

CNCF Ambassadorsの活動については基本的に個々人が自分で決めるものですし、活動範囲についても基本的にはグローバルなものになります。

他にも例えばKubeConに行ったらAmbassadors向けの交流があったり、SlackでAmbassadors向けのチャンネルがあってお互いの活動内容について共有したり、CNCFに対する改善提案を行ったりといったことをやっていたりします。

CNCJは日本国内での活動を目的にしていて、活動目的が全然異なっている感じですね。

CNCJは活動もかなり活発で積極的にMTGをしていたり、カンファレンスやミートアップについてもCNCJのページを見ていただくと結構あったりするかなと思います。

コミュニティ内でのコミュニケーションも完全に日本語で行っていますね。

早川:

なるほどです。

また別の質問なのですが、さっきyoukiは勉強用に開発をして結果的にOSSになったという話をしたと思うのですが、そもそもうたもくさんがOSS活動を始めるきっかけのようなものはなにかあったんですか?

うたもく:

それでいうと僕の出身が島根県の松江市なんですね。

松江市というとRubyの街ということで、あとは僕は高専の出身ということもあって、Rubyコミッターがすぐ側にいる環境だったんです。

今思うと結構豪華な環境だったんですけど。

なので僕の感覚としてはOSSをやるというのは不思議なことでもすごいことでも何でもなくて、みんな普通にやってることという認識でした。

毎年Ruby World Conferenceをやっていて、コミッターの人たちが集まってワイワイRubyに関する意見を話し合ったりするのを見ていたので、「OSSのコミュニティというのはこういうものだ」というイメージを持っていました。。

なのでOSSをやるのも「よし始めよう」というのは無くて、エンジニアっていうのはみんなOSSやってるもんなんだなという認識でいました。

こういう環境がyoukiをOSSでやるきっかけにはなったと思うけど、自分としては別にそういうものだよねというくらいの感覚であって気がついたらOSSをやっていたという感じです。

早川:

そうなんですね。コントリビューションみたいな「いわゆるOSSっぽい活動」ってみんながイメージしそうなものは何がはじめだったんですか?

うたもく:

youki以前だとちょくちょくでかいOSSにPRを送ってたりですね。

困ったらちょくちょくPRを出すし、自分が作ったツールやライブラリをOSSで出したりとかでした。

昔はRustのOSSって今ほど盛んじゃなかったので、Rustで開発していて困ったらライブラリにPR出したりはよくしてました。

後は自作OSをOSSで公開したりとか。

早川:

最近だとOSS活動としてやる内容って変わってきたりといったことはあるんですか?

うたもく:

youkiに関しては、もちろん自分で手を動かしたりもしてるんですが、どちらかというとマネジメントが増えてきたなという印象はあります。

今メインでコントリビュートしてくれる人がどんなことをやってくれるかを把握したりだったりとか、youkiの新たにコントリビューションしてくれそうな人にissueを振って上げたりだったりとか、youkiをCNCF Sandboxプロジェクトに入れるに当たって必要なものを用意したりだったりとかですね。

タイミングとしてはyoukiがrunwasiで使われるという話が出たあたりからで、ここ1~1.5年前くらいからマネジメントの割合が増えてきた気がしています。

一方Kubernetesは全然マネジメント的なことはしてなくて、1コントリビューターとして楽しくPRを出しています。

youkiがCNCF Sandboxに参加するためにうたもくさんが作成したissue

早川:

今の話しで言うと、スリーシェイクのメンバーに対しても技術顧問として例えば「youkiで今こんなissueがあるけどどう?」みたいな感じでタスクを割り振ってくれたりですかね?

うたもく:

ですです。

日本だと「OSSやりたい」って言ってくれる人は結構いると思っていて、その次のステップとして実際どんなことをやっていくのかが課題になるイメージがあるんですけど、それに対して「じゃあこれどう?」というのをやっていこうかなと思っています。

意欲はあるんだけど何をやったら良いかなという人に対して「じゃあこれやってみて」という形で渡してあげると取り組んでくれるかなと。

やっぱり「やりたいとは思うんだけどじゃあ何をやったら」という課題って難しいと思うので。

後は大きなOSSになってくると関わり方が難しかったりという部分があると思うんだけど、それでいうとyoukiはちょうど良いかなと思ってて、OSSやってみたいけどって人にとってちょうど良い大きさのプロジェクトなんじゃないかと思ってます。

youkiはメンテナが結構成熟していて、僕も知らないところでPR出されてマージされててといったことが結構あります。

実際にスリーシェイクのメンバーがyoukiに出したPRをメンテナの人がレビューしてることも結構ありますね。

今だとyoukiは僕含めてメンテナが6名いて、内2名がフルタイムでOSSに取り組んでいる方、それ以外は個人として取り組んでいるんですが、個人で取り組んでる方々はyoukiの初期から関わってくれてる人たちです。

フルタイムの方はタスクを投げたらすぐにやってくれるんだけど、個人の人たちはそれぞれの生活のペースがあってすぐに取り組めるとは限らないので、どんな感じでyoukiに関わってくれているのかだったりどこに住んでいてどんな生活をしてるのかだったりといったことをちゃんと対話をして把握していくというのが大事かなと思っています。

早川:

ありがとうございます。OSSやコミュニティ活動として今後取り組んで行きたいこととしてはどんなことがありますか?

うたもく:

直近だとまずはKubeCon Japanがあるので、日本も盛り上がってますよというのをグローバルに示して行きたいですね。

youkiに関しては無事Sandboxに昇格してもらったので、ちゃんとCNCFとの共存をやっていくということを考えています。

あとは、例えばrunwasiのようなイノベーションが起きている流れでWasmというキーワードが出てくる中で、それを支える存在にyoukiをしていきたいなと思っています。

今までは高レベルコンテナランタイムとしてcontainerdCNCFのプロジェクトとしてあったんですけど、低レベルコンテナランタイムでCNCFのプロジェクトだったものってなかったんですよね。

なのでyoukiがCNCFのプロジェクト入りすることで新しいイノベーションが起こせると良いなと考えています。

あともう一つは、RustでCNCFのプロジェクトを実装する、となったときにRustはGoに比べてライブラリが明らかに足りないというところがあると思ってるんですよ。

とはいえRustで書けた方が良いレイヤーもいくつかあると思っていて、そういうところにも役立てれるようにするためにyoukiで書いたコードはちゃんとライブラリ化していくということには取り組んで行きたいと思っています。

例えばOCI Runtime Specのパーサーはyoukiで作っていてそれがかなり使われていたり、後はスリーシェイクのメンバーが取り組んでいるlibseccompのRustネイティブ実装のライブラリ化だったり、cgroups周りのライブラリなども当時メンテナンスされているものがほとんどなかったりしたので、ちゃんとyoukiで使っていてメンテナンスされ続けるライブラリとして出していきたいなと。

youkiを通してRust実装のライブラリも整備が進んでいくことで、CNCFのRust関連プロジェクトに貢献できればなと思っています。

やっぱりyoukiはRust実装なので、Rustについての注目度が高いのかなと思っています。

スリーシェイクメンバーが取り組んだlibsecompに関するPR

技術顧問としての活動とこれから

早川:

ありがとうございます。正直このインタビューのネタってわりかしざっくりとした感じでしか準備してなかったので、具体的な話が色々と伺えてめちゃくちゃ助かってます。

じゃあちょっと次の話題に進みたいんですが、実際に技術顧問としてどんなことをやってくれているのかについて改めて紹介してもらえますか?

うたもく:

はい、まずはyoukiですね。

僕がコントロールしやすいところということもあって色々とコントリビュートしてもらっています。

大きい話としては、seccompのライブラリ実装の話があると思っています。

詳細については実際にコントリビュートをしてくれたさとけんさん(上記PRの作者)とeBPF Meetupで登壇する予定です。

後はSlackチャンネルの方で面白そうで貢献できそうなネタを紹介したりもさせてもらってます。

例えばKubernetesのスケジューラ周りの機能追加に関するissueを紹介したりだったりとか。

このあたりがOSS活動に関するわかりやすい例かなと思っています。

あとは先程のtimesチャンネルに僕が気になった情報を色々書かせてもらったりしています。

例えばWasm周りに興味ある人がちらほらいるという話しだったのでそのあたりの紹介をしたりとか。

そういえば僕何故かCNCFのWasmワーキンググループの立ち上げ貢献人に名前が乗っているんですよね。

早川:

そうなんですね。そう、そういえばKubernetesのスケジューラ周りのやつに僕もコントリビュートさせてもらったのがあるんですけど、スリーシェイク内でも興味を持ってもらえて、そこに関連するテスト追加のissueにスリーシェイクのメンバーが5-6名参加してテスト追加のPRを出すというのが起きていたりしたんですよね。

僕が直接「これみんなでテスト書くPR出してみますか?」みたいな話をしたわけでもないのにみんなが一気にコントリビュートしてて面白いなと思った記憶があります。

気づいたらそのissueで書くテストの半分近くをスリーシェイクのメンバーがやっていたんですよね。

インタビューのはじめの方で技術検証活動という活動に触れたと思うのですが、その場で元々僕もテストの作成をしようかなと思ってissueの方の紹介をチームメンバーにしてたんですけど、そこから広まって桜井さん(@saku3)という僕の技術検証チームのメンバーの方もテスト追加のPRを出して、そこからチーム内外の方が取り組むようになりました。

最終的に僕のところの技術検証チームの方とそれ以外の方でそれぞれ半々くらいでやっていた気がしていて、僕のチームじゃない方も何名か参加していたのを見てスリーシェイク内のOSS貢献に対する取り組みのステージが1段階上がったのかなと感じました。

スリーシェイクメンバーが取り組んだissue

うたもく:

そうですね。皆さん技術力は高いけど今までやってなかっただけという感じの方が多いですよね。

今までOSS活動の背中を押す人がいなかったというか。

早川:

はい、はじめの1歩を踏み出すのってすごい大事でやってみないと実感できないことって多いと思うので、今回そこの大きな一歩を踏み出せた人もいたんじゃないかなと感じています。

うたもく:

やってみないとどこから手をつけたら良いのかもわからなかったりするので、そういう意味で一歩踏み出せたのは大きいんじゃないかなと思います。

この活動をきっかけにOSS活動に取り組むというのがスリーシェイクのメンバーにブログを書いたり登壇するのと同じくらい身近なアウトプット活動だと感じてもらえると良いなと思います。

さっき僕がOSSに触れたきっかけについても話しましたが、この辺ってOSS活動に取り組み人が身近にいるかでハードルに感じるかどうかが結構変わってくると思います。

なのでスリーシェイクのメンバーにも僕と同じように「OSSは身近なもの」というのを感じてもらいたいなと考えています。

早川:

ありがとうございます。

ところで実際に技術顧問として数ヶ月活動していただいてどうですか?

実際にやってみての感想や印象として変化したことなどがあれば教えていただきたいです。

うたもく:

そうですね、さっきと重複してしまうのですが、やっぱり技術力があるけどやってなかっただけの人が多かったんだなといのは思いました。

youkiでやってることも結構難しいことをやってると思うんですけど、自分たちでキャッチアップして「これどうですか?」とか質問しながら進めてくれてるので僕としては非常にコミュニケーションも取りやすくやらせてもらっています。

あとは皆さんアウトプットにすごい積極的だなという印象でした。

アウトプットを出すモチベーションがあって、アウトプットを出していくための活動をするのにすごいウェルカムな人が多いというのは強く感じますね。

しかもそれがみなさんが業務でメインで使われているKubernetesだけじゃなくて、それ以外のyoukiだったりに対しても同じなので面白いことだなと感じています。

何回も繰り返しちゃうんですけど「自社で使っているOSSにコントリビュートする」というのはすごいわかりやすいんですけども、それ以外の技術でも検証したり、OSSのコントリビュートに繋げられるのはすごいことで他にはなかなかないんじゃないかなと。

スリーシェイクメンバーも取り組んでいるyoukiへのissue追加の一部

最後に

早川:

最後になるのですが、今後の技術顧問としての活動でどういったことに取り組みたいかについて教えて下さい。

うたもく:

はい、最初に話した通りOSSへの貢献の持続可能性みたいなところってエンジニアの世界全体の課題になっていると思っています。

なので、特に実際に手を動かしてOSSのコードを書いていくという所への持続可能性をどう考えるのかのモデルとしてスリーシェイクさんが1つのロールモデルの形になるとすごい面白いんじゃないかと思っています。

例えばKubernetes自体は使っているけども、youki自体は多分業務では使っていないと思っていて、そういった単に自社で使っているところ以外への貢献というモデルができて、それをちゃんと言語化するところまでができる面白いんじゃないかと。

あとせっかくならDevStatsの数値も日本企業の中でトップレベルのところに持っていきたいですよね。

そこを採用だったり、スリーシェイクがお仕事を紹介してもらうきっかけになるようにアピールできるようになっていくと良いんじゃないかと思ってます。

ユーザー別のDevStatsスコアの例(その他にもプロジェクト別のスコアなどを確認できるダッシュボードなどがある)

ゆくゆくはスリーシェイクのメンバーが、例えばKubernetesで言えばいろんな機能追加のPRを出すとか、KEPを書くだったり、その先にあるOSSのマネジメントレベルの取り組みができてくると面白いんじゃないかと思っています。

あとはスリーシェイクから面白いOSSを作って公開するみたいな取り組みもできると良いと思っています。

こういったことに持続可能性を持って取り組んでいけると良いですよね。

早川:

そうですね。僕らもこういった活動を通してモデルを確立するというか、ちゃんと企業として取り組む価値を高めてそれを言語化できると良いのではないかと思っています。

ということで本日のインタビューは以上にできればと思っています。

うたもくさん、ありがとうございました!


いかがだったでしょうか?

1時間くらいインタビューと称して色々なお話を聞かせていただいたので、かなりのボリュームになってしまったのですが、その分楽しめる内容になっていたのではないかと考えています。

スリーシェイクが主催している「3-shake SRE Tech Talk」という勉強会があるのですが、うたもくさんには、2025年1月に開催する3-shake SRE Tech Talkでも登壇していただく予定となっていますので興味のある方はぜひご参加ください。

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