クラウドネイティブとは 〜新時代を切り拓くためのCCoE・SRE導入と実践〜

2024.11.1

目次

  1. はじめに
  2. クラウドネイティブとは何か
  3. クラウドネイティブが、システム開発や運用にもたらすメリット
  4. クラウドネイティブなシステムを構築、運用するためのポイントや始め方
  5. 代表的なクラウドネイティブ技術
  6. クラウドネイティブアプローチの事例
  7. Sreakeでできること

1. はじめに

クラウドネイティブとは、クラウドの特性を最適に活用することを目指すアプローチや考え方のことです。

2006年にクラウドコンピューティングという言葉が誕生し、インターネット技術を利用してサービスを提供するコンピューティングスタイルは、今日まで急激に発展を遂げています。

クラウドネイティブは、そういったクラウドコンピューティングを利用したIT戦略や、デジタル・トランスフォーメーション (DX) の取り組みにおいて、非常に重要な概念の一つです。

本稿では、クラウドネイティブとは何か、なぜ近年トレンドとなっているのか、の開発や運用にどのようなメリットをもたらすのかについて説明します。

また、クラウドネイティブなシステムを構築、運用するためのポイントや始め方、注目されている技術についてもご紹介します。

2. クラウドネイティブとは何か

クラウドネイティブとは、クラウドサービスを利用したインフラ環境に最適化されたアプリケーションの開発や運用を指すワードです。

クラウドの特性を最大限に活用し、システムのスケーラビリティやレジリエンスを高めて、アクセス増加や障害などの事態に迅速に対応することや、開発速度を向上させることを目的としています。

クラウドネイティブは、2000年代からその必要性が議論され始め、クラウドコンピューティングの普及とともに大きく発展してきました。

初期のクラウドサービスは、従来のオンプレミス環境をクラウドに移行することや、IaaSとしてクラウドサービスを利用できることに重点を置いていましたが、現在はアプリケーションレイヤまでクラウドでネイティブに設計することの重要性も広く認識されるようになっています。

クラウドネイティブがこれほどまでにトレンドとなっている背景には、デジタルトランスフォーメーションの加速や、企業が迅速に市場の変化に対応する必要性が高まっていることが挙げられます。

変化の流れが早い現代において、迅速にPoCを実施し、サービスリリースを加速させてビジネス環境変化に追随することは、企業にとって非常に重要な取り組みとなっています。

クラウドネイティブなアプローチを採用することで、開発サイクルが短縮され、リリース頻度を高めることができると、ビジネス創出などのイノベーションが促進されます。

また近年は、マイクロサービスやコンテナ技術の普及などもクラウドネイティブのトレンドに拍車をかけています。

従来のアプリケーション開発や運用が直面していた課題の解決に繋がることも、クラウドネイティブが必要とされる理由の一つです。

例えば、スケーラビリティの問題は、クラウドネイティブなアプローチにより、リソースを自動的にスケールアップまたはスケールダウンできるようになります。

予期せぬアクセス量の増加などにも自動で対応でき、運用の手間を減らすことが期待できます。

また、マイクロサービスアーキテクチャを採用することで、大規模なモノリシックアプリケーションを、より管理しやすい小さなサービスに分割することが可能となり、変更や障害により強いシステムを構築することができます。

そういった背景から国内外でクラウドネイティブの活用は広がり続け、グローバル企業では、NetflixやAmazonなどがクラウドネイティブなアプローチを積極的に採用し、その成功事例が注目されています。

国内でも、多くの企業がクラウドネイティブな技術を活用し、ビジネスの柔軟性や競争力の向上を図っています。

クラウドネイティブは、企業のデジタル変革を支える重要な要素として、今後もさらに発展していくことが期待されています。

3. クラウドネイティブなシステムが開発や運用にもたらすメリット

クラウドネイティブなシステムは、システム開発と運用の両面で多くのメリットを生み出します。

システム開発時のメリット

開発プロセスの加速

マイクロサービスアーキテクチャとコンテナ技術を活用することで、アプリケーションチームの開発を円滑に進めることにつながります。

小さなサービス単位で開発を進めることができるため、他のシステムとの複雑な依存関係を解決し、新機能の追加やバグ修正を素早く行うことが可能になります。

柔軟なスケーラビリティ

コンテナオーケストレーションなどクラウドネイティブに関する技術を駆使し、自動スケーリング機能を利用することで、需要に応じてリソースを柔軟に調整できます。

これにより、急なトラフィックの増加にも迅速に対応でき、コスト効率の良い開発が実現します。

システム運用時のメリット

高い可用性

クラウドネイティブなシステムは、障害耐性を持つ設計が可能です。

マイクロサービスが独立して動作するため、一部のサービスに障害が発生しても他のサービスへの影響が最小限に抑えられ、システム全体の可用性を維持できます。

継続的なデリバリー

どのような環境でも動くようにコンテナ化されたアプリケーションは、開発環境から本番環境への移行がスムーズになります。

CI/CDパイプラインを組み込むことで、コードの変更が自動的に本番環境にデプロイされ、継続的なデリバリーを実現できます。

以上のように、クラウドネイティブなシステムであることは、開発のスピードと柔軟性を高めると同時に、運用の効率化と安定性をもたらします。

これらのメリットは、現代のビジネス環境において競争力を維持するために不可欠な要素となっています。

4. クラウドネイティブなシステムを構築、運用するためのポイントや始め方

クラウドネイティブなシステムの導入は、企業のデジタル変革における重要なステップです。そのためには、次の二つの要素が欠かせません。

クラウドセンターオブエクセレンス(CCoE)の設立

CCoEは、クラウド戦略の策定、ベストプラクティスの共有、および組織全体のクラウドへの取り組みを支援するための専門チームです。

CCoEの設立により、クラウドネイティブへの取り組みに対する技術や知見が組織全体で共有・統一され、各開発に対して横断的に展開することが可能になります。

CCoEは、クラウドガバナンスの確立、コスト管理、セキュリティポリシーの策定など、クラウド導入に関わるあらゆる側面をサポートする役割となります。

サイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)の採用

SREは、システムの信頼性と効率を維持するためのエンジニアリングアプローチです。

運用にソフトウェアエンジニアリングの手法を取り入れ、様々な開発や運用の自動化、効果的なデータ収集や可視化を行います。

SREチームは、開発プロセスの自動化、モニタリング、インシデント管理などを通じて、クラウドネイティブなシステムの安定性と信頼性を維持する役割となります。

このような組織の設立や、クラウドネイティブなシステムへの変革を進めていくためには、以下のような取り組みのポイントがあります。

段階的な導入

クラウドネイティブなシステムの導入は、一夜にして完了するものではありません。

まずは小規模なプロジェクトや特定のサービスから始め、徐々に範囲を拡大していくことが重要です。

段階的なアプローチにより、組織が新しい技術やプラクティスに適応し、リスクを最小限に抑えながら、クラウドネイティブへの移行を進めることができます。

組織文化の変革

クラウドネイティブなシステムの導入は、技術的な変化だけでなく、組織文化の変革も伴います。

エンジニアやスタッフが新しい技術やプラクティスを受け入れ、活用するためには、専門的な技術サポートや教育が不可欠です。

イノベーションを促進するため、クラウドネイティブなアプローチを採用することの重要性を組織全体で共有する必要があります。

これらの要素を意識し、適切に組み合わせることで、企業はクラウドネイティブなシステムの構築運用を実施することができます。

また、組織文化の変革を伴うことで、迅速なシステム開発への意識が高まり、ビジネス競争力の向上にも繋がっていきます。

5. 代表的なクラウドネイティブ技術

近年は、コンテナやマイクロサービスの技術の普及も、クラウドネイティブシステムの発展に大きく寄与しています。

代表的なものとして、Docker、Kubernetes(K8s)、Istio、およびObservability(O11y)が挙げられます。

Docker

Dockerは、アプリケーションをコンテナ化するためのプラットフォームで、アプリケーションとその依存関係をパッケージ化し、環境に依存しない形で実行できるようにしたものです。

Dockerの登場により、開発環境と動作環境の差による制約にとらわれることなく、開発・テスト・本番環境間での移行がスムーズになり、アプリケーションをデプロイする際のプロセスが非常に簡単になります。

Kubernetes

Kubernetesは、コンテナオーケストレーションのためのプラットフォームです。

複数のコンテナがある場合に、それらの自動スケーリング、ローリングアップデート、負荷分散など、高度な管理機能を実現することができます。

Kubernetesを利用すると、コンテナ化された多くのアプリケーションに対して、デプロイメントや運用をより簡単に、そして高度に管理することが可能になります。

また、Kubernetesはコンテナ実行基盤としてのインフラのメリットだけでなく、その拡張性からさまざまな定常運用をKubernetes側で行うことも可能です。

コミュニティが非常に発達しており、エコシステムが豊富であることから、さまざまなOSSと連携して機能を拡張することが出来るのもKubernetesを利用する大きなメリットとなります。

Istio

Istioは、マイクロサービス間の通信を管理するためのサービスメッシュと呼ばれるツールです。セキュリティ、監視、トラフィック管理などの機能を提供し、マイクロサービスアーキテクチャの高度な運用や管理を実現します。

Kubernetes と合わせて活用されることも多く、コンテナ間の通信を透過的に制御し、多数のアプリケーションがある場合にも制御や管理をしやすくするための役割を担います。

Observability

Observabilityは、システムの内部状態を理解し、問題を迅速に特定および解決するための力のことで、アプリケーションやインフラから様々なデータを収集し、可視化することで、システムの正常性などを簡単に理解できる状態を目指すべきとされています。

マイクロサービスアーキテクチャなど、多くのアプリケーションが稼働するシステムでは、ログ・メトリクス・トレースなどのデータを収集し、システムのパフォーマンスと健全性を一元的に監視できることは非常に重要です。

OSSではPrometheusやGrafanaなど、SaaSではDataDogやNewRelicなどのツールが、Observabilityの実現に広く使用されています。

CI/CD

CI/CDは、開発プロセスの自動化を通じて、ソフトウェアの品質向上と迅速なリリースを実現する手法です

Continuous Integrationでは、開発者がコードをリポジトリにコミットすると、自動的にビルドやテストが実行され、コードの品質や適合性を確認するようにします。

またContinuous Deploymentでは、テストをパスしたコードが自動的に本番環境にデプロイ出来るような仕組みを構築します。

Jenkins、Travis CI、CircleCIなどのツールがCI/CDの実現に利用され、AWSのCodePipelineやGoogle CloudのCode Build、GitHub Actionsなどのサービスも広く利用されています。

これらの技術は、多くの企業によって採用され、クラウドネイティブな環境の構築に貢献しています。

DockerとKubernetesは、コンテナ管理とオーケストレーションの標準技術となっており、様々な企業で導入が進んでいます。

Istioは、マイクロサービス間の通信の管理を強化し、Observabilityは、システムの透明性と信頼性を向上させます。

これらの技術を組み合わせることで、効率的でスケーラブルなクラウドネイティブなシステムを構築することができます。

6. クラウドネイティブアプローチの事例

クラウドネイティブなアプローチを実践し、ビジネスのイノベーションやDXを実現している事例もご紹介します。

メルカリ

メルカリでは高度なSREチームを組織し、クラウドネイティブやマイクロサービスのシステムを構築、運用しています。

サービスのグローバル展開や信頼性の向上に向けて、SREチームが共通的なインフラを整備していることや、開発速度の向上を目指してマイクロサービス構成を採用していることなどが報告されています。

メルペイ

メルペイではマイクロサービスアーキテクチャを採用し、サービスリリースの短サイクル化に取り組んでいます。

Kubernetesなどクラウドネイティブ技術を利用して開発を進める中で、技術スタックはもちろんのこと、システムを開発・運用していくために組織文化の変革も重要であるという報告がされています。

Netflix

Netflixは、クラウドネイティブなアプリケーションを通じて、世界中の顧客にストリーミングメディアサービスを提供しており、2016年にはほぼ全てのインフラをクラウドに移行したことが報告されています。

大部分にAWSを利用しており、世界中に配置されたAWSクラウドのリージョンを複数利用することにより、グローバルインフラの対応能力が拡大し、世界中でより快適なストリーミング視聴を提供可能になったとされています。

Spotify

Spotifyは、クラウドネイティブな技術を駆使して音楽ストリーミングサービスを提供しており、特にkubernetesの自動スケーリングなどを活用しています。

突発的なアクセス増加に対してエンジニアが手作業でスケールする必要がなくなり、ユーザ体験の向上だけでなく、エンジニアがアプリケーションの開発に集中できるというメリットもあったと報告されています。

これらの事例は、クラウドネイティブなアーキテクチャや組織文化の導入によって、企業やサービスが成長し、競争力を獲得できることを示しています。

7. Sreakeでできること

Sreakeは、クラウドネイティブシステムの設計・構築スキルを持ったエンジニアやアーキテクトを擁し、高度なクラウド利用に関する技術支援を行なっています。

また、CCoEやSREの組閣・コンサルティングから、 SRE運用内で使用するツールの導入など、 上記の取り組みに関して全般的にご支援しています。

クラウドネイティブの取り組みに関するご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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